[draft#1]小さな平屋建ての住宅

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小さな平屋建ての住宅

柔らかい朝の光がカーテン越しにベットに届いて眠りが浅くなってきた。右へ左へゴロゴロと寝返りをうっている内に外では鳥が鳴き始め、目覚まし時計がアラームを打つ。ダイニングへ向かう前に洗濯機に衣類を放り込んでスタートボタンをして、ササッと手早く顔を洗って足早に家族のいるところへ向かう。

ダイニングに着くと我ながら良くできた中学生の息子がキッチンに立って家族3人分の朝食を準備してくれている。将来は“食に関わる仕事”がしたいとか言っているけどどうなることやら・・・。そんな姿をよそ目に朝からロボット式掃除機と手分けをして部屋の掃除を済ませてしまう。夫も身支度を済ませてゴミを集積場所へ持っていく。ちょっと慌ただしい朝だけれど、やるべき事は家族が手分けして短時間に終わらせてしまうのがルール。すべて終わったら家族みんなでダイニングに集まって朝食をいただく。いつもと変わらない1日のスタートが今日も始まる。

夫と息子を庭先で見送って、ふと家を見る。どこにでもある住宅街の一角に家を建てて数年が経った。奇抜な形をした家でも特徴のある家でもないけれど、徐々に地域に馴染んで家に深みが出てきたように思う。普通の家よりもちょっと多めな木々もよく育ち、お隣さんの立派な木と緑が繋がるようになってきた。鳥も虫も自由に行き来ができそうだ。洗濯物をパパッと干したら仕事に入ろうと思う。

仕事をする場所は決めずに日々気分で変える。落ち着いて集中したい時は天井が低めなダイニングで仕事をするし、アイデアをひらめきたい時は開放的なリビング窓近く、考え方を変えたいときは包まれた空間であるリビングの一人掛けソファだったりする。自分自身が一番よいパフォーマンスを発揮できる場所を選んで仕事をしたい。

夜は数日前から予定していた夫婦二人の知り合いをゲストに呼んで小さな食事会をする。夫が昨日作っていた煮込み料理に加えて簡単な料理を数種類作って完成させる。食事会までは後1時間。学校から帰ってきてリビングでくつろいでいる息子を、キッチンから見えないけれど雰囲気と空気感で感じとりながら、仕上げのラストスパートをかける。

“ピンポン!”まずはゲストの内2人が訪れる。この家にはダイニングとひと続きの土間空間があるだけで、あらたまった玄関はない。カフェで待ち合わせをして出会うぐらいフランクな感覚で挨拶をかわし、食事会はスタートする。まずはダイニングでワインを片手に季節の野菜や簡単な肉料理を食べながらたわいもない話で盛り上がる。そうしている内に、夫が帰宅し、残りのゲストも到着すれば、食事会は本番。

手狭なダイニングから広いリビングに場所を移し、大きめなソファを使いながら机や椅子を並べて即席の会場とする。バックミュージックは夫の選曲でサウンドスピーカーから柔らかく流す。二人で少し込み入った話がしたい場合はダイニングの方へ席を移しても、庭に出てもいい。小さなたまり場が複数あることで、ちょっとした便利さが生まれている。

片付けを終えて一段落したその日の深夜、夫と息子がダイニングテーブルで向かい合って真面目な話をしているのをよそ目に寝室へ足を運んだ。ダイニングはリビングほど砕けすぎず、個室ほどあらたまりすぎない空気感がある。我が家にとってダイニングとダイニングテーブルは家族や友人、知人など人を結びつけてくれる重要な場所と考えている。

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