本を読む場所のある終の住処

何十年も昔に購入して何度も読み直した本、書店で見つけていいなと思いそのまま読む時間がなく目を通していない本。その時に読みたい本を本棚から探し、手にとって読んでいる時間は、日々の忙しさから身を置き、自分の時間を生きているような気がする。

仕事に暮らし。忙しなく動き続けてきた日々を過ごし、ふと立ち止まったときに自分のペースで過ごすことができる家があったらいいなと思うことがある。そこに本があったら。

本が好きな老夫婦が終の住処として建てる家はどんな形だろう。

地方の住宅地に建つ人生で最後の家となる終の住処。アプローチの前には誰もが腰をおろしてもよいベンチを計画。住人はもちろん、通りすがりの人も、犬と散歩をしている人も、配達員がちょっと荷物を置く場所としても。この場所に住む人として、人に優しくありたいという願いから。

家はできる限り1階で生活しながらも大きすぎない大きさ。玄関を開けると小さめな玄関土間空間があり、さらに扉を開ければリビングやダイニング、キッチンなどみんなが集まれる空間、その奥にはプライベートな寝室などがある。

本を読むことができる場所はたくさんある。太陽の光が入ってくる土間の空間だったり、下屋のある小さなテラスだったり、庭に置いてあるベンチだったり。もしくは、2階の少し暗い部屋だったり。その時に読んでいる本に合わせて、本を読む場所を変えるのもいい。ソファに腰をおろして読んでも、ゴロゴロ寝転がりながら読でも。自分と本。途中で笑ったり、涙を流したり・・・本の世界観に浸る時間。

夫婦が無理をして時間を共有しなくても、同じ家の中で、それぞれがそれぞれの場所で、ゆっくりと本を読みふける。過多に干渉しすぎず、ほどよい距離館を個人の時間を大切にしながら、これからの人生を暮らしていく。

2階は本を読む空間だけではなく、子どもたち夫婦が子どもを連れて帰ってきた時のゲストハウスとしての役割も果たす。9畳ほどのスペースだけれど、布団を敷いて家族が寝るだけのことはできる。