場所は「ちょっと田舎の十字路」で建物は「作業室付きの小さな住宅」。町の中に存在する十字路(角地)は特別な場所だなと思うことがあります。
大人になった今では車を利用してどこへでも行き、日本や世界の数百、数千の十字路(角地)を通過してきたかもしれません。それでも道に迷ったときは角地が分岐点や結節点になり、道しるべになっているように思います。少し記憶を遡ってみたい。まだまだ行動範囲が狭かった小学生の頃の遊び場所は半径100mから200mぐらいが中心で、場所を説明するにも「○○くんの家を右に行って」、「犬のいる家を・・・」、「怖いおばあちゃんがいるお店の・・・」、「ちょっと変わった家・・・」と角地が大人よりも身近なもので、何となく今でも記憶に残っていたりします。
大人はもちろん、子どもの記憶の中に良い記憶として残るような十字路(角地)を作るきっかけができないかな、そのためにはどんな家がいいかな。みんなにとってプラスな記憶が生まれる十字路に建つ家のことを少しだけ考えてみたい。
場所は「ちょっと田舎の十字路」で建物は「作業室付きの小さな住宅」を想定。コンセプトは「角地」であり、主に写真の左側が作業室(高い方)、右側が住宅(低い方)となっています。この建物のポイントとなる場所が作業室の前に作られた「小さな緑のスペース」と思い計画しています。
本当は家が建てられる敷地を少しだけ小さな緑のスペースとして町のみんなが使用してもいい空間としたい。十字路に少しだけ生まれた空き地がこの家に住む人、町の人とをつなぐ空間になってくれたら嬉しい。(もちろん、鳥や虫も歓迎したい・・・。)
例えば、作業室の大きな扉を開けて仕事をしていれば、近くに住む人と毎日挨拶をする中で信頼関係を築けていくことができるし、子どもに仕事の魅力を自然と伝えていけるかもしれない。また、この場所が小学校の通学路になっていれば、十字路を通る車を避けられる退避帯として活用できる上、十字路の道路を直角に歩くよりも、ほんの少しだけショートカットできることから、小学生の男の子が楽しそうに通り過ぎるかもしれない。実のなる木々が育ち、植物や虫たちが生きる芝や土の上はボコボコしていて、走れば転んだり、木に登れば落ちるかもしれないけれど、子どもらしい行動を見守ってゆく面白さもありそうに思う。
家が密集して建ち並ぶ風景の中にあって、町の中にちょっとした空き地というゆとりを楽しめる場所があってもいいかなと考えます。
小さな家で無駄なく現実的に暮らす
無理をせず身の丈に合った家の大きさが居心地のいい家かなと思うことがあります。数十年前よりも数年前よりも時代の風を少しだけ早く感じられるようになった今、暮らし方は人それぞれですが、この家ではできる限り小さな家としています。家族が上手に生活できる大きさの家を確保した上で、狭くなった時には家庭の経済状況に合わせて少しだけプランニングを変更することや増築することも考えられるかもしれません。
最初は小さく作り、時代や生活に合わせて対応していく住まい方は、家が人生の重荷になる可能性を弱めてくれるとも考えています。
詳細
敷 地 261.44㎡(78.93坪)
建 築 119.25㎡(36.00坪)
延 床 116.35㎡(35.13坪)
公開
2015年4月26日 杜の宮市vol.15(愛知県一宮市)
※実際に建築された住宅ではありません。